早稲田大学に在籍していた頃、会社法の授業で「記名捺印」の法的な意義を学びました。担当教員だった尾崎安央教授は、何をもって記名になるかを熱っぽく語り、今でもその光景をはっきり覚えています。
日本では、一般的に会社名義の書類の場合、社印及び代表取締役の署名をもって、正式に法的な効力のある文書になります。個人の場合、署名と実印をもって文書を作成した者の真意が証明されます。
中国では、会社の書類の場合、社印があれば、会社名義のものであると推定され法的な効力を有します。個人の場合、印鑑はその出番が無いと言ってもいいほどあまり機能していません。印鑑を持ち歩くことはごく稀です。欧米並みに署名、つまり自署が重視されます。中国では、個人に印鑑を押してくださいと言われたとき、気安く押しますが、署名してくださいと言われると、大抵の人は慎重になります。大事な文書は印鑑より自署を求められるのです。
近頃、社印なし、または自署なしの書類に関して相談を受けるケースが増えてきています。皆さんも、社印の捺印、名前の自署に慎重に対応し、相手方から受け取った法的な書類に必要な捺印と署名があるか、確認を怠らないようにして下さい。あとは日付も忘れずに確認しましょう。
(上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2013年3月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)