「M&A」をよく耳にする。まわりに案件だらけで商機が確実に潜んでいる。しかし、成就させようとすると道のりは遠い。お相手が決まったM&Aのデューデリジェンス(買収監査)のご依頼を受けたり、お相手探しのご相談をされたりしている中、M&A当事者としての注意点を改めて認識させられた。2、3件ご紹介して参考にして頂きたい。 まず、売買当事者は必ず弁護士をつけること。弁護士だから当然なことを言っていると思われるかもしれないが、本当に当事者の立場を考えて提言させて頂きたい。実際の案件の中に、ある買収側企業は、基本条件での問題は見当たらないし、書類手続き等は売却側の弁護士がやってくれるからと思い、専門家に助言を求めることをしなかった。しかし、行政手続き上重要な事項を売却側の弁護士から知らされてないため、後になって厄介なことになってしまった。当該ケースにおいては、売却側の弁護士はその手続きを告知する義務はなかったため、明らかに買収側の対応不足と言わざるを得ない。 次に、仲介者の注意点として初期段階においては社名の開示を慎重にしなくてはいけない。性急に社名を開示したら知らない間に情報が漏れて別なルートで案件が進められている可能性がある。それから、打診段階が過ぎてある程度進展が見えてくると、基本契約書、委任契約書、秘密保持契約書等で固めるべきである。 ビジネス世界のM&Aは「お見合い」みたいなものである。「相性」の問題が重要である。売却側企業に、なぜ売れないのかと疑問を投げられたことがある。それは「結婚」みたいなもので、好感を抱くお相手が現れていないと考えてほしい。 日頃の雑談の中からも「M&A」みたいな話が出てくる。色々な業種の方が集まる各ビジネス・サークルが「M&A」のフリーマーケットみたいに見えることがある。もちろん、どの会社も当事者になる可能性があり、身近で発生することである。関心がある方は情報のアンテナを張って、できるだけ失敗しないように専門家に意見を求めてもらいたい。 (上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2013年1月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)