王麗敏弁護士が綴る日中法律の架橋ブログ

日中間の法律の違いを分かりやすく説明した法律エッセーを中心に掲載しています。
上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』などで発表した記事や、日本や中国で出会った方々についてコメントを寄せています。

ご意見、ご要望がある方は、 wanglimin@allbrightlaw.com までご連絡下さい。

誰でもM&A

「M&A」をよく耳にする。まわりに案件だらけで商機が確実に潜んでいる。しかし、成就させようとすると道のりは遠い。お相手が決まったM&Aのデューデリジェンス(買収監査)のご依頼を受けたり、お相手探しのご相談をされたりしている中、M&A当事者としての注意点を改めて認識させられた。2、3件ご紹介して参考にして頂きたい。 まず、売買当事者は必ず弁護士をつけること。弁護士だから当然なことを言っていると思われるかもしれないが、本当に当事者の立場を考えて提言させて頂きたい。実際の案件の中に、ある買収側企業は、基本条件での問題は見当たらないし、書類手続き等は売却側の弁護士がやってくれるからと思い、専門家に助言を求めることをしなかった。しかし、行政手続き上重要な事項を売却側の弁護士から知らされてないため、後になって厄介なことになってしまった。当該ケースにおいては、売却側の弁護士はその手続きを告知する義務はなかったため、明らかに買収側の対応不足と言わざるを得ない。 次に、仲介者の注意点として初期段階においては社名の開示を慎重にしなくてはいけない。性急に社名を開示したら知らない間に情報が漏れて別なルートで案件が進められている可能性がある。それから、打診段階が過ぎてある程度進展が見えてくると、基本契約書、委任契約書、秘密保持契約書等で固めるべきである。 ビジネス世界のM&Aは「お見合い」みたいなものである。「相性」の問題が重要である。売却側企業に、なぜ売れないのかと疑問を投げられたことがある。それは「結婚」みたいなもので、好感を抱くお相手が現れていないと考えてほしい。 日頃の雑談の中からも「M&A」みたいな話が出てくる。色々な業種の方が集まる各ビジネス・サークルが「M&A」のフリーマーケットみたいに見えることがある。もちろん、どの会社も当事者になる可能性があり、身近で発生することである。関心がある方は情報のアンテナを張って、できるだけ失敗しないように専門家に意見を求めてもらいたい。 (上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2013年1月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)

競争から共生へ

ある日、賢者たちは「人間は利己的に行動する動物である。利己的過ぎると他者への侵害になってしまう。」ということに気づき、「法律(或いは村社会のルール)」というものを作り上げた。しかし、この目に見えない縛りは100%機能しているとは言えない。もし一日を無法日に設定したら、この一日、どんなことが起きるだろう。それを想像してみると、「法律」というものは空気のような存在だが、不可欠な存在と言える。
しかし、「法律」のない動物社会は何を持って規制されているのか。動物も基本的に利己的である。種によって「寄生」、「共生」も見られるが、「弱肉強食」は普遍的なルールである。ところが、同種の中では利他的な行動をする動物も存在する。蜂はその一例であろう。群れが敵に攻撃されると敵を刺すことによって敵を撃退する。刺した蜂は命を失うが、他の蜂はその蜂の利他的な行動によって生き延びることができる。結果的に種全体は命を継続できるのだが、個々の蜂にとって利己的な結果だとは言えないのではないだろうか?
蜂に学べとはナンセンスである。人間には「法律」の社会がある。人間の利他的な行動は他の動物のものと区別しなくてはいけない。しかしながら、個々が利己的に考え過度な競争に走れば、最終的に行き場を失う結果に成りかねない。如何に良性的な競争をしながら、共に生きる社会を目指すかは難しい課題である。個々の認識及び努力から始めるしかない。
(上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2012年9月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)

郷に入れば郷に従う

真夏に入った上海を後にし、梅雨真っ只中の東京に向かう。やがて空港のゲートを経て、秩序的な日本のオフィス街に自分の身を溶かしてゆく。東京との縁は、かれこれ20年になる。この間、変わらぬ東京、変貌していく上海、そしてそれぞれの地に住む中国人と日本人を見てきた。
多少なる由縁があって、上海でいくつかの日本の方が集まるサークルにお世話になっている。また同じ理由で、東京で中国人の集まりに顔を出している。異国に住むそれぞれの国の人は、他国の色に染まっていることを感じられる。
中国で生活する日本の方の中には、自分を前向きに考え、日本固有の「キマリ」とか「枠」から脱却した方が多い。ルールの欠けている場面では大陸的になり、戸惑いながらも慣れていっているようだ。各々生存していく方法を習得しており、「迫力」さえ感じられる。日本に住む中国人は、周到に用意されている日本のシキタリに、当然のように感心しながら従い、そして長くいればいるほど、ルールを意識しながら慎重に行動するようになる。
郷に入れば郷に従うより「従わざるを得ない」ようだ。生物学的にいうと、いやでも「保護色」に変えさせられるようで、洒落た表現をするなら「グローバル化」である。法的な理由から服従する場面があり、いわゆる「コンプライアンス」を意識する時もある。従うのは結構なことだが、それぞれ固有のよい持ち味を失うことなく、そして相手によい影響を与え続けることを願って止まない。
東京に到着した日曜日、東京都心のオフィス街は相変わらず整然として穏やかであった。騒然で慌ただしい上海から逃げて来た私にとって、一時の安らぎを得られる。
(上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2012年7月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)

東京で対中投資の熱気を感じる

桜の花びらがまだ枝にいくらか残っている4月中旬に、東京での仕事の合間に、二つのセミナーに参加した。
ひとつは江蘇省の泗洪地区の開発区の誘致説明会であった。
沿岸部の人件費の上昇により外資の内陸への進出が進んでいる中、どのように誘致ポイントを説明されるかと思っていたが、メリットは現地の人件費は内陸の大都市より安い、交通便利等が挙げられた。「大型」が奨励されている中で、中小企業の進出への対応はいかがだろうと、質疑応答の場でお聞きしたら、積極的にサポートし、援助をする体制を整えていると回答された。他にも出席者から積極的な質問があり、意欲が感じられる。また、何よりも、主催者の積極姿勢である。招商局の責任者と会話をする際、上海か南京まで来られたら、車で迎えに行くと言われ、思わず現地を見てみたい気持ちが沸いてくる。
もうひとつは、浙江省にある舟山群島の開発区のものであった。シンセン開発区、上海浦東開発区等に続き四つ目の国家開発区のプロジェクトであり、初めて海洋、島をテーマとした開発区であるがゆえに注目が集まった。席が追加されたほど会場には出席者で溢れた。世界が狭いというか、会場で弊職チームの若手弁護士と縁のある地方幹部と巡り合った。
改めて、インターネットの時代でも、直接対面する場での交流の大切さを感じさせられた。
(上海日本語コミュニティ情報誌『MARCO』2012年5月号掲載 / 筆者:王麗敏弁護士)
ギャラリー
  • 上海中心ビル
  • ライブドアブログ